滲み出る虹
ジリリリリリ…


時計の鳴き声すらも暑く感じる。夏真っ盛り。タンクトップは寝汗でびっしょりだ。タオルで体を拭きながら時計を静める。


「そろそろ冷房がいるな」
そんなことを思いながら慣れた動きで仕事を終える。あいかわらずのスピードだ。


軽く腹を満たすと涼は家を出る。8月3日、この日は雲一つない快晴だった。額を一筋も二筋も汗が流れる。街は虫かごを持った子供たちが走り回るわけでもなくいつもと同じだった。


「そういや、今日だっけか」
思い出したかのように涼は駅前のCDショップへ向う。ニューリリースと書かれた棚から一枚取り出すとレジへ。どうやら涼がごひいきにしているアーティストの新譜が発売になったようだ。

店を出ると早速CDを開封。鞄から使い古したポータブルCDを取り出すとCDをセットした。

ヘッドフォンからは陽気でいて、儚げで、美しいメロディーが流れる。口笛でも吹いてしまいそうな気持ちの中、涼はあの丘を目指した。
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