滲み出る虹
丘はあいかわらず人気がなかった。そして涼はあいかわらずこの場所が好きだった。いつもと違うところ、それは耳元がやかましかったということ。


涼はベンチに座ると歌詞カードを取り出した。涼はそれをパラパラとめくる。11曲分の歌詞を眺めながら色々と思う。CDを買ったことのある人なら誰もが経験したことのあることだと思う。涼が眺めるそれには端の方に小さく虹のイラストが入っていた。とても印象的だった。


「7曲目からの流れがたまらないな」
そんなことを思いながら時間が過ぎるのを待った。奈々にも聞かせてあげたいなと少しだけ思った。


気が付けば涼の瞼は塞がっていた。家から一番近い避暑地、それがこの丘。寝汗一つかくことなく涼は眠っていた。ここへ来て初めてとても複雑な思いが顔に現われていた。
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