滲み出る虹
一通り少女は説明。そして、

「つまり私は奈々ではありません。私は奈々の人格の一つ、ひかると申します。以前一度会ったことがあります。あなたが初めて奈々と会った次の日に」


「………」
涼は一言も言葉が出なかった。ただただひかるの言葉を聞いているしかなかった。


「たしか、和哉もお世話になりましたよね。あの子も奈々を含む七つの人格の一つなんです」

「………」
涼は許せなかった。違和感こそ感じていたもののそんな重大なことに気がつかなかったのだから。


「私たちは例外を除いて記憶を共有しています。私たちは奈々という人間ではあるものの、それぞれに自我や人格を持っています。私たちは七つで一つ、一つで七つなんです。つまり、わかりますよね?」


業務的な口調で話すひかるに対して、涼は初めて口を開く。
「………奈々の想いと他の奴の想いは違うってこったな………」



「簡単に言えばそうです。でも少し違いますね。私個人の意見としては奈々の想いを尊重したいと思っております。しかし、あなたは奈々以外の私たち全てを受け入れた上で奈々と接することができますか?おそらく無理でしょう?」


「………わからない」本当の気持ちだった。涼には今脳内に訪れた情報を瞬時に理解することは無理だった。


「奈々は次にあなたに会った時に全てを話そうとしていました。幸い今は彼女は眠っているので今私があなたに全て話していることには気付いてません。私は奈々に傷ついて欲しくないんです。奈々のためです、もうここには来ないで下さい………」


涼はただただ立ち尽くしていた。その世界は氷のように真っ白で、宇宙のように真っ暗で、悪魔のように赤かった。
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