滲み出る虹
ジリリリリリ…


今日は珍しく早く起きた。何故だろう。夜、そんな気分だった。だから早く時計をセットした。

実を言うとまだ少し眠い目をこすりながら時計を黙らせる。そこからはいつも通り素早かった。


7月31日、夏休みもまだまだたっぷり残っている。涼は本を三冊持って今日も散歩に出かけた。

午前中は公園で一冊の本を読んだ。かなり読みかけの時代小説。戦国時代を生き抜いた武将の生き様に心を踊らせた。

お昼になりコンビニでお弁当を買い、再び歩く。行き先はそう、昨日も訪れたあの丘。とても懐かしい、あの丘。


「今日も会えるとうれしいかも」
涼は小さな期待を胸に抱いていた。昨日出会った奈々という少女のことが気になって仕方なかった。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだった。でも、たぶんそれは恋とかとは違った。
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