滲み出る虹
目が覚めるとそこにはやはり真っ赤な世界が広がっていた。その赤を見て、何故かウサギを思い出した。そしてウサギが寂しさで死んでしまうというのは本当なのかなと疑問に思った。少しするとバカバカしくなってやめた。

あいかわらず眩しい夕日を見ながら涼は軽く伸びをした。体が軋むのが気持ち良かった。視界にはしっかりとこの場所へ来る理由が映っていた。


「こんにちは」
涼はすっかり慣れた口調で挨拶をした。


「こんにちは」
昨日ともその前の日とも違う明るいトーンで目の前にいる人は言う。

「今日は暑いね」
なんのこともない世間話ぐらいしか出てこないのだが、それでもいいかという気にさせられるのだからすごい。

「暑くて死んじゃうかと思った」
今日は妙に無邪気な返事が続く。でも嫌じゃない。


すると目の前にいる人は続いて聞いてくる。
「お兄ちゃん、今ヒマ?」


「ヒマだけど」
たぶんこの子は自分のことを年上だと思っているんだろうと涼は脳内で解釈する。


「ほんと!じゃあボクと遊んでよ!」
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