もっと俺を欲しがって?
開け放されたままのドアから中を見ると、
神子戸様はさっきと変らない、机にダルソーに頬杖をついた姿勢で座っていた。
な、何があったんだろう…痴話喧嘩…?
すごく気まずかったけど、私は忘れ物を取るためこっそり中に足を踏み入れた。
できるだけ気づかれないようにしようと思ったけど、うちの年季の入った床がギシ、と音をたてたせいで、神子戸様がゆっくりとこっちを振り向いた。
「……あれ、きみ」
神子戸様が長い睫毛に縁どられた瞳を、ぱち、と一回瞬きして
「……小柴ゆあ」
ふ、と微かに口角をあげた。