もっと俺を欲しがって?
「…い、いえ、すみません少々取り乱しました」
「へえ、変なの」
神子戸様が気だるそうにスマホをブレザーのポケットにしまった。
「ちなみに、さっきの女子、泣いてましたけど何かあったんですか…?」
「ん?え、あー」
ほんの10分にも満たない前の記憶なのに、神子戸様の中ではもう削除されかかっているようだ。
「なんか、そーいえばこいつ誰だろって思って、誰?て聞いたら、なんか急に出てった?かも」
「な、名前…知らなかったんですか?」
「うん、知らないよ?」
神子戸様がさも当たり前みたいな顔して頷く。
「俺人の名前とか興味ないし、覚えらんないの。昔から」
「そ、そうなんですか…」
やっぱり小町が言ってた、神子戸様が“恋愛不感症”って噂、本当なのかも。
そう思う一方で、アレ?と気づく。
「でもさっき、私のこと、“小柴ゆあ”って。名前、呼んでくれましたよね…?」