もっと俺を欲しがって?
「…なんでもいいけどさ~」
にらみ合う私と戸澤の間でため息をついた小町が言う。
「あんたらほんと仲良いよねー。もう付き合えば?」
「「なんでやねん!!!」」
あアア!声がかぶってしまった!
「ちょっとマネしないでよ!」
「こっちのセリフだわ!!」
いつのまにかアンパンを食べ終わったらしい戸澤が荒々しく席を立った。
「小便言ってくる!」
「世界一いらない情報だわ」
「うっせえ!」
そして戸澤は教室を出て行った。
ふうー、やっと静かなお昼が戻った。
ほっとしてご飯を再開しようとすると、前方から注がれるニヤけた視線に気づいた。
「…ちょっと小町。何か?」
「べつにー。ただ、ほんとにアリじゃないかなーって。
有愛と戸澤の――」
小町が、右手と左手でハートを作った。
「ちょっとナイ。マジで、ナイ」
「なんでー。喧嘩するほど仲が良いっていうじゃん?」
「私たちには当てはまりません」
戸澤とは、3年生になってすぐに隣の席になって。
その次の席替えでもなぜかまた隣の席。
仲悪いのに縁はあるっていう最悪な感じだ。