【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜

 
 甘さと酸味のバランスが上手く取れれば、最高のアップルパイになることは間違いないんだ。
 ここで妥協は絶対にしたくない。 そのためには、改良を重ねて最高のアップルパイを作ることが、わたしにとっては大翔さんへの恩返しになる。
 大翔さんが応援してくれるからこそ、わたしたちはみんなで頑張れる気がする。

「次は王林ね」

「はい。王林は煮崩れしやすいので、少し煮詰める時間を短くして、トロッとした食感になるようにしています」

 煮崩れがしやすい王林は煮詰めることでトロッとして、まろやかなまるでジャムのような食感になる。

「うん、王林も美味しい」 

「美味しいですね。確かに煮崩れしやすい分、トロッとした食感になってます。 それと、舌触りがよくて滑らかですよね。まるでプリンのような滑らかさがあります」

 確かに王林には程よい酸味があるので、甘みだけではなく滑らかな舌触りになっている。 
 ジョナゴールドの甘みに王林のほのかな酸味が加わることでよりマッチするのに、甘すぎることなくかと言って酸味が強すぎる訳でもない。

 この二つの相性はとても良い気がする。見つめる時間をより短くするか長くするかで変わるけど、これならもっと美味しいアップルパイになることは間違いない。

「でもところどころ、酸味が強い箇所がある気がするわね」

「そうですね……」

 若干の酸味は必要だけど、強すぎる酸味はあまり良くない。
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