【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「大人は好きな味だと思うけど、子供はどうかしらね?」
確かに片山さんの言う通りだ。大人な味には仕上がるけど、万人受けを目指すとなると、子供には少し酸味が強い気がする。
子供にも食べやすいように、王林だともっと工夫をしていく必要がある。
「もし王林と組み合わせるとなると、少し砂糖をプラスすると酸味は少し和らぎそうなんですけどね」
「でも酸味が和らぎすぎると、今度は甘みが引き出されすぎる気がするけどね」
「そこなんですよね……」
スプーンを加えたまま考え込む片山さんは、スプーンを口から離し「とりあえず本命の紅玉、いってみよっか」と口にした。
「ですね」
最後に用意していたのは、第本命の紅玉だ。 紅玉は普通のリンゴと比べても200g程しかない小ぶりのリンゴだけど、煮込んでも煮崩れしにくい肉質をしているから、一番アップルパイに向くかはわからない。
紅玉が柔らかく煮詰まるまでの時間をザッと計算すると、弱火にして約十分ちょっとくらいでトロトロになった。
甘酸っぱいいい香りが漂う中で言うと、紅玉が一番リンゴの香りを引き出せる強者な気がする。
「うわ、なにこれ……」
「……美味しい」
紅玉って煮詰めるとこんなに美味しいの?ってくらい美味しい。
甘さと酸味のバランスもとてもいいし、トロトロになってるからまるでジャムみたいのようなトロトロ具合になっている。