【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


「紅玉、なかなかの強者じゃないですか?」

「ですね。これは強敵ですね」

 紅玉が第本命になりそうだが、どうなのだろうか。 ジョナゴールドと合わさることで生まれるハーモニーは特に気に入っているのだけど、他の候補と比べてもなかなか手強い。

「天野川さんはどう思う?」

 片山さんからそう聞かれて、わたしは「わたしも、ジョナゴールドと相性がいいのは紅玉なような気がします。……ただ、紅玉だけだとまだ何か足りない気がするんですよね」と答えた。

「天野川さんの意見に、わたしも賛成」

「え?」

 片山さんは「確かにジョナゴールドと紅玉の相性はいいと思うんだけど、まだほんのちょっと何かが足りない気がするのよね。ちゃんと甘みもあるし、ちゃんと酸味もあるんだけど、なんかちょっと足りない気がするの。……でもねえ、その゙何ががわからないのよねえ」と目の前のスプーンを見つめながら話した。

「確かにもうちょっと、コクを出したいですよね」

「そうなのよ。そのコクをもう少し引き出せる何かがあるといいんだけど。……それがなんなのか、わからないのよねえ」

 アップルパイに必要なコクは存分に出せると思ったのだが、そのコクがいまいち足りず、なにが足りないのかがわからない。

「シナモンの量はね、これでいいと思うのよ」

「そうですね……」

 アップルパイならではのコクをどうやって出すかが、課題になりそうだ。
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