【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「やっぱり、砂糖の量をもう少し増やしてみるとか……?」
「でも砂糖だけの甘さだけだと、コクは出にくいんですよね」
「じゃあどうしよっか」
小野さんや片山さんたちと、より美味しいアップルパイを作るためにわたしたちは遅くまでアップルパイ作りに没頭した。
生地は完成してるから、後は中身だけなのだが。……とはいえ、中身が完成しないとやっぱり美味しいアップルパイとは言えない気がする。
お客様が美味しいと食べて喜んでくれるそのアップルパイが完成した日には、絶対にいいものだと胸を張って言えるはずだ。
アップルパイを作ってくれた母の分まで、美味しいアップルパイを絶対に完成させたい。
* * *
「お疲れ様、由紀乃」
「大翔さん、お疲れ様です」
仕事が一段落した頃、大翔さんが休憩所にいたわたしに気付いて声をかけてくれた。
「アップルパイ作りは順調か?」
「はい。なんとか、ですけど」
大翔さんはわたしの隣に座ると、「そうか。遅くまでお疲れ様」とわたしの頭を撫でてくれた。
「ありがとう」
「今日はもう終わりか?」
「はい。わたしはもう終わりです」
大翔さんは「良かった。じゃあ、一緒に帰ろう」と立ち上がった。
「え?」
「俺も今日はもう終わりなんだ。 一緒に帰ろう」
「本当に? 嬉しい」
大翔さんの顔を見ると、疲れも吹き飛びそうだ。