【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
あれはヨーグルトの酸味が程よくて、とても美味しいアップルパイだった。
「ねえ、天野川さん」
「はい」
「ヨーグルトでコクをプラスするってことは、ヨーグルト以外でもコクは出ると思わない?」
片山さんからそう言われて、「ヨーグルト以外でコクを出せるものって、何でしょうか?」と問いかけた。
「もしこれにヨーグルトを入れたら、酸味が逆に強くなってしまいそうじゃない? てことは、コクを出すのにヨーグルトみたいな何かをプラスすればコクは出るってことになるわよね?」
「……そうですね」
ヨーグルト以外でコクが出るものか……。なんだろう?
「あの、バニラエッセンス……ってどうですか?」
「バニラエッセンス?」
「はい。酸味と甘みのバランスが崩れると、味って一気に変わると思うんですけど、バニラエッセンスなら程よく酸味も残せますし、甘みも消すことなくコクが出せるんじゃないなって思うんです」
シュークリームを作る時のカスタードクリームにバニラビーンズを入れるのと一緒で、このリンゴのシャキシャキとトロトロの中にバニラエッセンスを入れてみたらどうだろうか。
「バニラエッセンスか……。そうね、やってみましょう」
「はい」
わたしたちは早速、リンゴを煮詰めたものにバニラエッセンスを数滴垂らして香り付けを試みる。
「リンゴの香りの奥に、少しだけバニラの香りが香るわね」