【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「はい。 奥行きのある甘い香りがしますね」
「ええ、そうね」
コンロから鍋を上げ、少し冷ましていく。
「味見してみてください、片山さん」
「いい?」
スプーンを片手に味見をしてみる。
「……うん、悪くないわね」
「はい。悪くないですね。ていうか……美味しくないですか?」
「ええ、美味しいかも。このバニラオイルの奥行きのある香りが、リンゴの甘酸っぱい香りをさらに引き立ててくれてる……?」
まさにそんな気がしている。リンゴの甘酸っぱい香りの中にあるふと香るバニラのほんのり甘い香りが、なんとなく心地良い気がする。
「片山さん、これもう少しバニラオイル足してみます?」
「もう少し足してみましょうか」
「はい」
バニラオイルの量をもう少しだけ増やして火にかけていく。
「んー……いい香り」
「そうね。華やかな香りが鼻を抜ける感じが、いいかも」
もう一度火を止めて少し冷ましていく。
「鼻に抜ける香りが心地良いわね」
「はい。 なんだかこれだけで、アップルパイにした時の香りが想像出来るような……」
「バニラオイルを少し足すだけで、こんなに高級感のある香りになるのね。……ちゃんとコクも出てるし、甘みも酸味もちょうどいいね。 香り付けになってるだけじゃなくて、ベースの味を邪魔してない」
一口スプーンを口にするだけで、香りが華やかに香る。