【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに幸せと愛を乗せて〜


「これはこれで美味しいですけど、少しバニラの香りが飛んでるような……」

「そうね……バニラの香りが薄くなってるわね」

 ジョナゴールドと紅玉を合わせることで甘みと酸味のバランスは保たれているが、バニラオイルを入れるタイミングによってはバニラの香りが損なわれてしまう気がした。

「バニラオイルを入れるタイミングを少し変えてみましょうか。 最後の方に入れるようにして、香りをなるべく飛ばさないようにしてみましょう」

「はい」

 美味しいアップルパイを作ることを妥協したくないからこそ、わたしたちは懸命にアップルパイに取り組んだ。
 リンゴを煮詰める時間も細かく計算しながら、一番美味しく食べられる時間を計算していく。

 特に煮崩れしにくい紅玉をトロトロになるまで煮詰めるには、一番弱火にして約十分〜二十分と細かく時間調整をして、一番いいトロトロ具合を作っていくのが難しかった。
 煮詰めすぎるとトロトロになりすぎてしまい、シャキシャキリンゴとの相性が少しでも変化してしまう可能性があるからだ。

「パイ生地はこれでいいと思う。これは副社長からもお墨付きをもらったし。後はリンゴだけ、なのよね……」

「煮詰まり過ぎないように注意しながら、改良進めていきましょう」

「そうね。根気強くいきましょう」

「はい。スリーデイズのアップルパイは、世界一美味しいアップルパイを作ります。みんなに喜ばれるようなアップルパイを」
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