【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜

＊　＊　＊



「ただいま、由紀乃」

「大翔さん、おかえりなさい」

　夜十一時ごろ、会食を終えた大翔さんは帰ってきた。

「ただいま」

「大翔さん、今日もお疲れ様でした」

　大翔さんはわたしをそっと抱きしめ、「由紀乃、早く会いたかった」と頭を撫でてくれる。

「わたしも、会いたかった」

「由紀乃の顔を見ると、やっぱり安心するな」

「えっ？」
　
　わたしのおでこに軽くキスをした大翔さんは、「由紀乃がそばにいてくれるから、俺はいつも頑張れるよ。　ありがとう、由紀乃」と微笑んだ。

「わたしも、大翔さんのそばにいられて嬉しい。……大翔さんのおかげで、大好きなスイーツが作れるんだから、こんなに幸せなことはないよ」

　わたしが大好きなスイーツを作れるのは、全部大翔さんのおかげだから。

「由紀乃は優しいな」

「ううん、優しいのは大翔さんだよ」

　わたしはリビングに向かうと、「そうだ。改良したアップルパイ、食べてみてほしいの」と冷蔵庫からアップルパイを取り出した。

「あれからさらに改良したのか？」

「うん。リンゴも二種類にして、ジョナゴールドに紅玉を合わせたの。紅玉は弱火にして十五分煮詰めて柔らかくしてトロトロのジャムにして、その後シャキシャキのジョナゴールドと軽くて合わせてみたの」

「紅玉をトロトロのジャムに？」

「うん。それから、香り付けに少量のバニラエッセンスを加えたの」