【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ!」
開店時間と同時に、整理券を配布したお客様がずらりと入店してきた。 店内はあっという間にお客様で溢れかえっている。
「見て、大翔さん……アップルパイ買ってくれたよ!」
「ああ、そうだな」
目の前でアップルパイが売れていく姿を目の当たりにして、わたしは泣きそうになった。
わたしたちが一生懸命考えて作ったこのアップルパイが、次々とショーケースの中から消えていく姿が新鮮で、未だに信じられない。
「大翔さん、これって……現実?」
「何言ってるんだ。現実に決まってるだろ」
「そう……だよね」
これが現実だと未だに思えないくらい、不思議な気持ちになる。
「すみません、アップルパイを二つください」
「かしこまりました」
ショーケースの中のアップルパイが少なくなる度に、アップルパイが次々とショーケースの中に補充されていく。
それを見てわたしは、涙が出てしまった。
「由紀乃……泣くな」
大翔さんが頭を優しく撫でてくれる。
「大翔さん……嬉しい。わたし、嬉しい……」
「そうだな。嬉しいな」
「アップルパイ……売れてるね」
目の前でアップルパイが売れていく姿を見て、わたしはこんなに嬉しいことないなと思った。
「頑張って良かったな、由紀乃」
「っ……うん」
本当に頑張って、良かった。……諦めないで、本当に良かった。