【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「由紀乃さん、ちょっといい?」
イベントが始まる十分前、尾形さんに呼ばれた。
「尾形さん、どうかされました?」
「実はね、恐縮のイベントに急遽長良川蜜実さんが来てくれることになったんだ」
それを聞いたわたしは思わず「えっ!?」と大きい声を出してしまった。
「ほ、本当ですか? あの長良川蜜実さんが、ですか?」
「ああ。オファーをしたらたまたま予定が夕方から空いていたみたいでね、来てくれるそうだよ」
「あ、あの長良川蜜実……ですよね?」
南條ゆずの衣装をデザインしているあの世界的デザイナーの長良川蜜実が……ここに?
信じられない……。
「それでね、南條ゆずも一緒に来るみたいなんだけど……由紀乃さん大丈夫?」
「え?南條ゆずさんも……ですか?」
まさか、南條ゆずさんも一緒に……?
「由紀乃さんは、南條ゆずと話したことはなかったよね?」
尾形さんからそう聞かれて、わたしは「はい。ないと……思います」と答えた。
「ゆずと大翔は幼なじみだけど、二人は元恋人ってことでもないから、あまり気にしないでね」
「……わかりました」
でも二人は、幼なじみなんだよね? わたしの知らない大翔さんを知っていそうで、南條ゆずのことが少しだけ怖いと感じる。
マウント取って来たりとか……しないよね? もちろん、そんな人には見えないけど。
人間の裏の心なんて、わかりっこないからどうなのかもわからない。