【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


「大翔さん」

「ん?」

 わたしは大翔さんに、「今尾形さんから言われたんだけどね、今日のイベントに長良川蜜実さんが来ることになったらしいの」と告げた。

「長良川蜜実って……あの長良川蜜実か?」

「うん」

 わたしは頷いた後、「それと……南條ゆずさんも来るって言ってたよ」と告げると、大翔さんは「え? ゆずも来るのか?」と不思議そうな顔をする。

「みたいだよ。……幼なじみに久々に会えて、嬉しいんじゃない?」

 大翔さんの反応が見たくてそう聞くと、大翔さんは「嬉しい? 別に嬉しかねえよ」と言っていた。

「嬉しくないの?幼なじみなのに?」

「幼なじみって言ったって、何年も会ってないからな。そもそも、ゆずに会ったところで話すことなんて何もないけどな」

 やっぱり、大翔さんはあまりゆずさんには興味がないみたい。 まあ何年も会ってない幼なじみなんて、幼なじみとは言えるのかもわからないけど。

「二人は夕方から来るみたいだよ」

「そっか。 まあ由紀乃はゆずと話したことないだろうから、話しかけられたら少し話してやって」
 
 大翔さんからお願いされたわたしは「まあ……わかりました」と答えた。

「大翔さん、もう始まりますね。 呼び込み、お願いしますね?副社長」

 わたしは大翔さんの背中を軽く叩いてキッチンカーの方へと戻った。

「いよいよですね」

「ねえ、緊張してきた」

 予定通りの十一時、イベントはスタートした。
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