【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


「由紀乃」
 
「はい?」

 名前を呼ばれてふと天野川さんの顔見上げると、天野川さんは「君と結婚すると父親に伝えたら、どんな人なのかと興味津々だったよ」と言ってきた。

「え……。あの、それでなんて言ったんですか?」

 と問いかけると、天野川さんは「おっちょこちょいな人だと言ったよ」と笑っていた。

「えっ……!?」

 お、おっちょこちょいって言っちゃったの!?
恥ずかしい……!!

「そしたら親父は、笑っていたよ。佳織と同じだなって」

「佳織……?」

 って、誰なんだろ……?

「俺の亡くなった母親だ。 俺が15の時、膵臓のガンで亡くなったんだけど」

 と、天野川さんは言っていた。

「……あ、そうなんですね」

 なんか悪いこと、聞いちゃったかな……?

「親父が言うには、俺の母さんもおっちょこちょいな人だったらしい。 まるで由紀乃みたいだな?」

「え?」

「俺も親父も、似た人と結婚するんだな。……やっぱり親子だな、俺たちは」

 天野川さんは歩きながらそう言い、目を細めて笑っていた。

「由紀乃」

「……はい?」

「幸せにするよ、必ず」
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