【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


 そんなわたしの様子を見て、天野川さんは「由紀乃、目を閉じろ」と言ってきた。

「え……っと、本当にするんですか……?」

「当たり前だ。すると言ったろ?」

 そう言われたら、何にも言い返せない……。

「ほら、目を閉じろ」

「……は、はい」

 言われた通りわたしは、静かに目を閉じた。そして……。
 チュッというリップ音が、確かに聞こえてきたのだが……。

「……え?」

 あれ……? なんか分からないけど、唇に感触がない。
 そう思って目を開けると、わたしの唇ではなく、わたしのおでこに゙キズされていたのだった。

「ほら、約束通りキスしたぞ」

「………。え、キスって……おでこ、だったんですか?」

 てっきりキスと言われたので、唇かと思ってしまった……!
 は、恥ずかしい、わたしっ! 不覚っ……!

「なんだ。唇だと思って、期待した?」

 そう言われたわたしは、すぐに顔を真っ赤になるのが分かった。
 恥ずかしさで顔を伏せてしまう。

「……っ、天野川さん、意地悪いです」

「残念だった?唇じゃなくて」

「……そ、そんなこと、ありませんっ!」
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