【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


 って……。なんでわたし、こんなにムキになっているのだろうか……?
 
「顔真っ赤になってるぞ?由紀乃」

「そ、それは天野川さんがっ……」

 【それは天野川さんがわたしをからかうから】だと言おうとしたのに……。
 その天野川さんの整っている顔が、今度はわたしの目の前にあるのだった。
 頭が混乱しているせいか、状況を読み込むまでに少し時間がかかったけど……。
 
「ごめん。由紀乃のそんな顔見たら、本当にキスしたくなった」

「え、えっ……!?」

 わたし……。本当に天野川さんと、キス、してしまったみたいだ……。
 一瞬のことだったから、すぐに分からなかったんだ……。

「じゃあな、由紀乃。また連絡する」

 そう言って天野川さんは、わたしの頭を撫でると、キラキラとした笑顔を向けて駅の方へと消えていった……。

「……どうしようっ」
  
 キス……してしまった! まだ結婚してないのに、キスされてしまった……!
 だけどこの心のどこかで、イヤだという気持ちはないような気もした。
 このよく分からない不思議な感情に、わたしは頭を悩まされた。
< 26 / 191 >

この作品をシェア

pagetop