【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
母を亡くした大翔さんにとっての母の味って……一体なんだろう?
「……大翔さんの母の味って、ありますか?」
と聞くと、大翔さんは少し黙り込んだ。
「母の味、か……」
もしかして……。わたしなんか、変なこと聞いちゃったかな?
「……すみません、変なこと聞いちゃいましたね」
「いや、母の味が何か考えてただけだ。……俺の母の味は、肉じゃがだな」
「肉じゃが……?」
肉じゃが……意外だ。 大翔さんみたいな世界の人なら、高級なものとかを食べているイメージだったから、肉じゃがと答えたのは意外だった。
大翔さんのお母さんって、どんな人、だったんだろう……。
「なんだ、意外か?」
「……はい。ちょっとだけ」
と言うと、大翔さんは「俺の母さんは、料理が得意な人だったんだ」と言ってきた。
「……え?」
「母さんは金持ちだからと言って、高級な物ばかりを食べさせてくれた訳じゃないんだ。 母さんは普通の家庭と同じような物を出してくれていた」
その話を聞いたわたしは、驚いてしまった。ずっと高級品を食べていると思っていたわたしは、衝撃だった。