【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「意外だな、とか思っただろ?」
「はい。意外……です」
大翔さんは別世界の人だとばかり思っていたわたしにとって、驚きばかりしかない。
「俺の母さんは、すごい人だった。 母さんは亡くなる前まで、俺に人に優しい人間になりなさいと言っていた」
「優しい……人間?」
「そうだ。人を見下したり、バカにするような人間にはなるなと、いつも母さんは言っていた」
大翔さんのお母さんは、優しい人なんだな……。大翔さんに優しい人間になってほしいから、そんな風に育てていたんだ。
大翔さんの今の人柄は、お母さんのおかげなんだな。
「……大翔さんのその優しさは、お母さん譲りなんですね」
「そうだといいがな」
大翔さんのお母さんが生きていたら、一度会ってみたかったな。
大翔さんをこんなに優しい人に育ててくれたことを、心から感謝したい。
「大翔さん」
「なんだ?」
「今度、大翔さんのお母さんのお墓に、行ってみたいです」
わたしがそう言うと、大翔さんは「……分かった。 母さんにも結婚したこと、報告しないとだしな」と言ってくれた。
「……ありがとう、大翔さん」