【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


「行こう、由紀乃」

「は、はいっ……」

 大翔さんから右手を握られ、そのまま二人歩き始める。 握られたその手はとても温かくて、ちょっとだけ嬉しくなる。
 夫婦って、こういうものなのかな……。なんて考えたりした。

「なあ由紀乃」

「はい?」

「由紀乃は前に俺に、あまり恋愛経験がないと言っていたが……。俺と出会う前に、彼氏とかいなかったのか?」

 いきなりそう聞かれてしまったわたしは、少し驚いたけど「いなかったですよ。……ストレスとかはスイーツを食べて発散していたので、そんなのはなかったですね」と答えた。

「そうなのか。 スイーツがあれば、男なんていらないとでも思っていたのか?」

 そう聞かれると答えに困るけど……。多分そうなのかもしれない。

「悪い、冗談が過ぎたな」

 と大翔さんは謝ってきたけど、わたしは大翔さんに「いえ。実際にそうなので、気にしないでください」と言った。

「実際わたしは、スイーツのことしか興味がなかったので。男性とデートしたいとか、付き合いたいなとか、あまり考えてなかったですし」

「それでも由紀乃は、俺と結婚してくれた。感謝している」
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