【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
リンゴの試食
そんなことを言われたら、幸せすぎてしまう気がした。
「おやすみ、由紀乃」
「おやすみなさい、大翔さん」
その日の夜、一度身体を重ねあったわたしたちは、お互い抱き合い眠りに付いた。
「おはようございます」
「おはようございます、天野川さん」
その翌日、わたしはスイーツ開発部に出社していた。
「皆さん、注文したリンゴたちが昨日届いたみたいですよ」
「本当?」
注文したリンゴ、届いたんだ……!
「早速運んできてくれる?」
「そう言われると思って、運んでおきました」
「さすがね!」
と、片山さんはにこやかな笑顔を向けた。
「まずは試作を作る前に、リンゴを食べ比べてみましょうか」
「そうですね」
「あ、じゃあわたし、剝いてきます」
とわたしが言うと、片山さんは「いいのよ、天野川さんは! 副社長夫人にそんなことやらせる訳にはいかないわよ!」と言ってくれた。
「いいんです。 わたしは皆さんを手伝うために、ここにいるんですから」
それが大翔さんと結婚する時の条件、だった訳だし。
わたしに出来ることは、何でもやりたい。だって私の母の味を作るんだから。