【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜

  
 なるほど……。確かにバターの風味をもう少し増やすのであれば、生地に練りこむという方法がある。
 実際にバターは焼く時にハケで塗っているけど、プラスで練りこむってことだよね? その考え、わたしには思いつかなかったな……。
 さすが片山さんだ。

「……なるほど。それはいいアイデアですね」

「確かに焼く時に上にバターを塗っていましたけど、生地に練りこめばさらにバターの風味がアップしますよね。 なんていうか、口に入れた時のフワッと香るバターの香りと、リンゴの爽やかな風味が相まったらさらに美味しくなりますよね」

 それは片山さんだからこそ、出せるアイデアだなと思った。 わたしにはこんなアイデア、出せそうにない。

「……確かに。それならさらに美味しくなりそう」

 なんかすでに感じる。アップルパイという素敵なものが、さらに進化するその姿を。
 ワクワク……してきたかも。すごい楽しみ。

「決まりね。 次の試作では、バターの量を今までの10%くらい増やしてみましょう」

「はい」

 また一つ一つ、お母さんのアップルパイが現実身を帯びてきたんだなと感じる。
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