【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
そしてその日の夜、家に帰宅したわたしに、大翔さんはこんなことを言ってきた。
「由紀乃、スイーツ開発は順調か?」
「はい。今回は一応、リンゴの品種を変えることになって。明後日、新しい品種で試作を作ることになりました」
お味噌汁をお椀によそいながら、わたしはそう告げた。
「そうか。順調そうだな」
大翔さんは嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「はい。片山さんからの意見で、今回から生地に練りこむバターの量を10%程増やすことになったんです」
わたしは食卓に雑穀ごはんと味噌汁、鯖の味噌煮、ほうれん草のおひたしなどを並べた。
「へぇ。バターの量を増やすのか」
「はい。口に入れた瞬間のバターを風味をより感じられるように、バターをさらにプラスすることにしたんです」
どんなアップルパイになるのかまだ分からないけど、楽しみしかない。
「そうか。それは楽しみだな」
「え?」
「由紀乃の母さんの作るアップルパイが、少しずつ完成に近づいてきてるんだろ? 俺も早く、完成した物を食べてみたいな」
そう言ってくれた大翔さんに、わたしは「……はい」と答えた。