【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「天野川さん、今のうちにリンゴ煮詰めましょうか」
「はい」
わたしは小野さんと一緒に、角切りにしたリンゴとお砂糖、少量のはちみつを鍋に入れ火を付けていく。
「小野さん、焦がさないように気を付けてくださいね」
「はい」
小野さんは数日前にプロジェクトに加わった新しいスタッフさんで、片山さんがスカウトしてきた期待の新人さんらしい。
愛らしい笑顔が特徴で、食べることが大好きな二十歳の女の子だ。
「小野さん、火は弱火にしてゆっくりとかき混ぜてください」
「はい」
ゆっくりとかき混ぜながら煮詰めていくと、甘い香りが鍋からいっぱいに広がってくる。
「うーん、いいニオイしてきましたね」
「はい、いいニオイしますね。 お腹空いてきそうです」
なんて、小野さんは嬉しそうに言っていた。
「小野さんも、食べることが大好きなんだよね」
「はい。食べることがわたしのストレス発散方法ですから」
「嫌いなものとか、ないの?」
「ないです。何でも大好きです」
そっか、小野さんは好き嫌いがないんだね。
「そっか。 あ、そろそろ火を止めようか」
「はい」