【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜
「天野川さん」
片山さんはわたしに、「これ、一度副社長にも食べてもらいましょうか」と言ってくれた。
「えっ?」
これを、大翔さんにも……?
「副社長はスイーツ部門の担当だから、試作の過程を伝えておく必要があるでしょ? どこを改良したのかは、天野川さんも副社長には伝えてるんでしょ?」
そう問いかけられたわたしは、お皿をテーブルに乗せて「はい。改良の時点で、夫には伝えています」と答える。
「天野川さん、これを今から副社長に持っててもらえる?」
「分かりました」
「副社長なら多分、副社長室にいると思うから」
焼き上がったばかりのアップルパイを箱に詰めて、副社長室を目指して歩いていく。
「あ、奥様、こんにちは! お疲れ様です」
「お、お疲れ様ですっ!」
天野川大翔の妻というだけで、みんなから会釈されるのがなぜか緊張する。
会社での大翔さんは、どういう感じなんだろう……。普段の大翔さんとは少し違うのかな?とか、色々と想像しちゃう。
「あの、大翔さんって……?」
「副社長なら、副社長室にいると思いますよ」
「あ、ありがとうございます」
エレベーターに乗り、副社長室へと向かう。