【完結】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


 副社長室のドアをノックすると、部屋の向こうから「はい。どうぞ」と声が聞こえてくる。

 間違いなく、大翔さんの声だ……。

「失礼します。由紀乃です」

 副社長室のドアをゆっくりと開けて中に入ると、大翔さんは真剣な眼差しで資料に目を通していた。

「ん?由紀乃じゃないか? どうした?」

 大翔さんはわたしの方へと視線を向ける。

「すみません、忙しいのに」

「いや?大丈夫だ」

 わたしは大翔さんに「これ、新しいアップルパイの試作が出来たんです。 大翔さんにも、食べてほしくて持ってきたんですけど」とテーブルにアップルパイの入った箱を乗せる。

「お、改良したヤツか?」

「はい。リンゴの種類を変えて、生地のバターも10%ほど増やしました」

 中身を取り出すと、大翔さんは「お、香りがいいな」と微笑みを浮かべる。

「どうぞ、ご賞味ください」

「じゃあ、頂こうかな。 いただきます」

 大翔さんがアップルパイにフォークを入れると、サクッと音がする。

「いい音だな。サクサクだな」

「はい。美味しいので、食べてください」

 大翔さんはアップルパイを一口口の中に入れる。

「……うん、バターの香りがすごいな」

「はい」
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