【新作】クールな副社長に、一億円で愛されることになりました。〜アップルパイに愛を込めて〜


「まずベースのリンゴは、すでにジョナゴールドに決定してるから、それ以外の組み合わせを考えましょうか」

「そうですね」

 爽やかな酸味と甘みのあるジョナゴールドに加えるリンゴを選別するのだが、ここはあえてアップルパイには向かないリンゴを使ってみることにした。

「煮崩れしやすいのは、王林なのよね。王林はあまりアップルパイには向かないらしいし」

「わたし個人的には、紅玉を使いたいなーって思うんですけど、どう思います?」

「紅玉は小ぶりだけど甘みが強いもんね。ただ、煮崩れしにくいのよね。 もしトロッとした食感を残すなら、ある程度煮崩れしやすい方がトロッとした食感は残せそうなんだけどね……」

 など様々な意見が出る中で、わたしたちは基本のジョナゴールドに王林や紅玉を混ぜたベースを作ることにした。


* * *  


「出来ました」

「まずは味見してみましょうか」

「はい」

 ジョナゴールドをベースとしたシャキシャキ感を残したものに、トロッとした食感を作るためにあえて煮詰める時間を少し長くしたシナノスイートを混ぜてみる。

「いただきます」

 少し冷ましたものをスプーンで口にしてみる。

「うん、美味しい」

「美味しいですね」

「でもちょっと、酸味が消えちゃいましたかね?」

「……確かに、ちょっと甘いかもですね」
    
 出来は正直に言うと、悪くない。
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