呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
「……ところで、わざわざ戻ってくるなんて何か用なのか? それと、どうして彼女に呪いの本当のことを話そうとしたんだ?」
「そんなの、呪いの進行が進んでいるからに決まっているだろう。そろそろ腹を括って本当のことを話した方が万が一のためにも良いんじゃないのか?」
「それは……」
クリスは口を噤んで俯いた。すべてを打ち明けるとなると、クゥが自分であることも話さなくてはいけない。何よりも呪いが完全になった時のことをエオノラに打ち明けるのが怖い。
いくら今は本当の姿が見えているエオノラでも完全な呪いのクリスを見たら恐怖で震え上がるだろう。
「彼女とは夏終わりまでの関係だ。もっと強い薬を服用すれば身体は持つんじゃないのか?」
「これ以上強い薬は駄目だ。精神に異常を来す。だからエオノラに本当のことを伝えて協力してもらおうじゃないか。少しは打ち解けられたしな!」
ハリーが親指を立てて白い歯を見せるのでクリスは溜め息を吐いた。
「エオノラ嬢を困らせるようなことはしないでくれ。今日だって侯爵呼びからクリス呼びにしろと無理強いするなんて」
「嫌だったか?」
「嫌に決まって……いや、別に嫌じゃ、なかった」
エオノラに名前を呼ばれて嫌ではなかった。寧ろ彼女と仲良くなれた気がして心が躍った。