呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 食事を済ませたエオノラは早速外へと出かけていく。
 使用人たちには毎回散歩だと伝えているので皆それを信じてくれている。今日はジョンに雨が降りそうなので早く戻るよう言われたくらいだ。
 散歩は健康にも良く、お転婆な令嬢のように乗馬や釣りを嗜むわけでもないので小言を言われることもなかった。
(クリス様に会ったら、真っ先に宝石箱が開いたことを報告しないと!)
 きちんとお礼を言って、それからいつもよりうんと美味しいお茶を淹れよう。
 いそいそと通りを歩いていると背後から馬車の音が聞こえてきて、突然声を掛けられた。

「エオノラ!」
 その声を聞いて思わず足が止まり、エオノラの心臓が大きく跳ねた。
 馬車が隣で停車すると、中からあどけなさが残る可愛らしい令嬢――アリアが満面の笑みを浮かべて下りてくる。
「嗚呼、エオノラ! やっとあなたに会えて嬉しい!」
 アリアは息を弾ませながら、エオノラに駆け寄ってきた。
 橙色のワンピースで、裾にはレースの縁飾りがついている。愛らしさを強調するように腰には小ぶりなリボンがついていた。風がそよぐ度にリボンのレースがひらひらと揺れ、彼女をたおやかで可憐な妖精のように引き立てる。
 その服は、アリアに頼まれてエオノラがアドバイスをしたドレスの一つだった。エオノラの胸がちくりと痛む。

< 104 / 200 >

この作品をシェア

pagetop