呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 どのくらい泣いたのだろう。泣き疲れていつの間にか眠ってしまっていたらしい。
 遠くから小鳥のさえずりが聞こえてくる。エオノラはうっすらと目を開けた。
 まず視界に入ったのは梁のある真っ白な天井で、状況を確認するために起き上がるとベッドの上にいた。さらに、風邪をひかないよう身体にはブランケットが掛けられている。

 あれほど酷かった雨はすっかり止んでいて、窓から入る太陽の光が室内を照らしている。
「クゥは……いない。どこに消えたのかしら」
 両足を床に着けると、ピリリと膝に痛みが走った。
 転んで擦りむいていたことを思い出し、膝を確認すると傷口には包帯が巻かれている。
(クゥが傷の手当てを? だけどこんなに器用に手当はできないと思うけど……)
 首を傾げながら膝を見つめていると不意に声を掛けられる。
「起きたのか?」
 顔を上げると、クリスが室内に入ってきた。雨にでも当たったのか彼の青みがかった白銀色の髪の毛が半乾きで、肩にはタオルが掛かっている。
 クリスはエオノラの前までやって来ると立ち止まる。そしてベッドに片膝を付けると、力強くエオノラを抱き締めてきた。

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