呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
「嗚呼、キッフェン伯爵が屋敷を不在にしているせいであの男は好き放題に暴れ回っている。これ以上吹聴され続ければ、彼の主張を信じていない貴族たちまでいよいよ信じることになる。だから、それを払拭するためにもエオノラには、来週開かれる王宮の舞踏会へ出席してもらうよ」
「分かったわ」
エオノラはこっくりと頷いた。
自分とて、このまま指を咥えて眺めるだけでいるのはごめんだ。
「やましいことは何もしていないもの。きちんと社交界デビューして、自分が噂通りの人間じゃないって、時間は掛かるかもしれないけど証明してみせるわ」
「分かった。じゃあ早速出席の手続きをするよ」
以前のエオノラなら絶対気乗りしなかったし、戦おうともしなかっただろう。
現にアリアを理由にこれまでの自分は噂をどうにかしようと行動すら起こさなかった。
後ろ向きだった気持ちが大きく変化したのはクリスが励ましてくれたお陰だ。
(私にはまだたくさんの選択肢がある。一度失敗したくらいで人生が終わるわけじゃないもの)
これまでとは違う自分を自覚すると、来週の舞踏会に向けて計画を立て始めた。