【電子書籍・コミックス配信中】呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
第28話
「本当にクリス様には助けてもらってばかりです。宝石箱も無事に開きましたし、今日だってたくさんダンスの練習をしていただいて……ありがとうございます」
「私も、エオノラと踊れて楽しかった」
優しく微笑むクリスの姿にまた胸が甘くて苦しい何かにきゅうきゅうと締め付けられる。再び顔が熱くなるのを感じたエオノラは頬に手を当てて俯いた。
(もう、どうしてこんなに胸が苦しくなるの。というか、こんなに良くしてもらってばかりで何も返せていないのが申し訳ないわ)
エオノラは頬から手を離して顔を上げると、真っ直ぐにクリスを見据える。
「……クリス様、ずっと気になっていたんですが、呪いは進行すると一体どうなってしまうんですか?」
クリスは目を見張ると気まずい様子で視線を泳がせる。しかし、エオノラは逃げないでというようにクリスの手に、自身の手を重ねた。
「ハリー様から話は聞きました。ルビーローズの花が咲けば、クリス様の呪いは解けると。私、少しでもクリス様の力になりたいんです。だからルビーローズを咲かせる手伝いをさせてください」
真剣な眼差しで訴えると、クリスがゆっくりと立ち上がった。
「……私に付いてきてくれ」
それだけ言うとクリスはエオノラの手を引いて、場所を移動する。着いたのは絶対に近づいてはいけないと言われていた、ルビーローズがある鳥かごの前だった。