呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 エオノラはハリーが自分を庇ってくれていることに気がついた。
 きっと自分一人の力では今夜だけで噂を払拭することはできなかった。何度も舞踏会に参加して、地道に噂が間違っていると周りに認識させることでしか打つ手がなかった。しかし、ハリーのお陰で一気に風向きが変わり始めた。
 感謝の念を抱いていると、ハリーがこちらに身体を向けてくる。

「エオノラ嬢の社交界デビューが遅れていたのは私のせいだ。この場で謝罪させてくれ。そして社交界デビューおめでとう」
「いいえ、私の方こそ微力ながらハリー様にお力添えできて大変光栄に思っています」
 社交界デビューが遅れていたのは決してハリーのせいではないが、この場を納めるためにエオノラはハリーの主張に合わせる。ドレスのスカートを摘まんで深々と一礼した。
 すると、先程まで感じていた痛々しい視線が軟化していくのを肌で感じた。


 ハリーのお陰で身の潔白は証明された。今夜を皮切りにエオノラの悪い噂が嘘だと広がり、いずれは消えていくだろう。
 エオノラが安堵の息を漏らしていると、それまで黙っていたラッカム嬢が異を唱えた。
「お待ちくださいませ! それなら、デュークの発言はどうなるのです? 彼が私に嘘を吐いているということですか?」
 ラッカム嬢は顔を真っ赤にさせて、身体を震わせている。彼を一心に信じているその姿はどこまでも健気だ。

< 141 / 200 >

この作品をシェア

pagetop