呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「分かったわ。だけど向こうの意見もあるからあまり期待しないでね」
 もし相手が本当にクリスだった場合、嫌がることは確実。エオノラとてクリスに無理強いなんて絶対にできない。
 だからあまり期待はしないでと布石を打っておいたのだがあまり効果はないらしい。アリアはうっとりした表情を浮かべている。
(……本当にただ私の友人と仲良くなりたいだけなのかしら? シュリアを紹介した時は何の興味も示さなかったのに)
 彼女の表情から疑念が湧く。


 すると丁度、舞踏会場から流れていたオーケストラの演奏が鳴り止んだ。それに続いて数人の男女がぞろぞろとこちらへとやって来る。
 どうやら二曲目のダンスが終わって休憩に入ったようだ。
 エオノラは我に返ると、仮面を付けながらアリアに言った。

「いけない。お兄様が会場で私を探しているかもしれないから戻らないと」
「……うん、分かった。またね、エオノラ」
 エオノラは踵を返して足早に会場内へと戻った。そのせいので、顔を上げたアリアの表情をきちんと見てはいなかった。

「……きちんと、私に彼を紹介してよね? エオノラ……」
 アリアが灰色の瞳をギラギラと光らせていることを、エオノラは知らない。

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