呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
今こうしていられるのはやはりクリスのお陰だとエオノラは思う。
そしてふと、頭にクリスの姿が浮かぶと、きゅうっと胸が締め付けられた。
(嗚呼、まただわ。クリス様を思うと、ここが苦しくなる)
甘くて苦いものを感じながらも、エオノラは胸に手を当ててゼレクに微笑み返した。
「お兄様、私はもうリックと婚約解消したことを後悔してないわ。悲しくもない。今まで心配かけてごめんなさい。私はもう平気だから」
ゼレクは少し眉尻を下げるとエオノラの肩にぽんっと手を置く。
「謝らなくて良い。俺の方こそエオノラが大変な時に力になれなかった。不甲斐ない兄で申し訳ない」
「ううん、そんなことない。私自身が噂をどうにかしようと行動しなかったのがいけないの。それにアリアに累が及ぶのが心配だったから……」
「分かってる。俺もアリアのことは許せないけど、不幸になれなんて思ってない。とにかく、悪い噂は殿下のお陰で払拭されたことだし、社交界デビューも無事に終わった。エオノラも社交界の一員としていよいよ忙しくなるね」
「ええ、本当に。だけどこれからは自分らしくやっていくわ」
その後ゼレクと共に朝食を取り、エオノラは束の間の兄妹の時間を過ごした。