呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
「それはクリスから聞いたのか? だとしても、内容が中途半端だぞ」
「中途半端?」
エオノラが首を傾げるとハリーはクリスの様子を確認してから身体をこちらに向ける。
「君の言うとおり呪いが完全なものとなると自我を失う。ただの獣となり、最後はルビーローズを守ることだけに命を捧げる。それがラヴァループス侯爵の運命。そして呪いが完全になるということはただ狼になるだけじゃない」
祖母の日記帳によれば、呪いが侯爵の姿を醜い獣に変えてしまうとあった。あれは自我を失い本能だけで生きる狼を指しているのではなかったのだろうか。
急いで読んだから解釈を間違えたのかもしれない。
「では呪いが完全になるとどうなるのですか?」
「グゥゥッ!!」
丁度答えをもらう前に唸り声が聞こえてきた。
視線を向けるとクリスが身体を起こして攻撃態勢を整えている。
相変わらず敵意を剥き出しにした血走った目でこちらを睨んできていた。
だらりと涎を垂らすクリスは、敏捷な動きでこちらに駆けてくると、ベンチや樹木を足場にして軽快に跳んで襲いかかってくる。