呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
第36話
エオノラは改めて気を引き締めるとこの状況を打開する策を必死に考えた。
呪いを解くためにはルビーローズの花を咲かせる必要があるが、まずは自我を失ったクリスをどうにかしなくてはいけない。完全体となったらもっと凶暴化してしまうだろう。
(柘榴石は私にしか呪いは解くことができないと言った。だけど呪いを解くには……)
不意に、リンリンと鳴るルビーローズの音が耳に届いた。
それはいつもの悲痛な音ではなく、手招いているような抑揚のある優しい音色だ。早くこっちに来いと急かしているようにも聞こえる。
日記帳の最後に祖母は狼神と書いていた。この間、クリスは狼神の最後の言葉について話してくれた。ハリーは呪いが完全となると自我を失い、ルビーローズを守るだけに生きると言っていた。そして、柘榴石はエオノラにしかできないことだと教えてくれた。
頭の中にある点と点が一つの線となって繋がっていく。
エオノラは顔を上げるとハリーに叫んだ。
「まずはルビーローズの鳥かごの中へ移動してください!」
「待て。鳥かごはダイヤル式の鍵が掛かっている。解錠する四桁の数字が分からないぞ」
「大丈夫です。この間クリス様が解錠するのを見ていました。数字は分かります」
「……先に走れ。俺は後から行く」
ハリーの指示を受けてエオノラは鳥かごへと走った。後ろのハリーがクリスの触手攻撃を魔術で防ぎながら移動してくる。