呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
「姿がもとに戻ったところで改めて挨拶しようか。私はフェリクス・エスラワン。心が病み離宮に閉じこもっていることで有名なあの第三王子だ」
唐突に知らされた真実に絶句した。
「ラ、ラヴァループス侯爵ではなく、第三王子殿下!?」
思い返してみればハリーがいち侯爵のために魔術院で薬の研究をするなど、いくら仲の良い友人であるとはいえ、あまりにも行き過ぎた行動だ。だが、それが大切な弟となれば、身骨を砕くのも理解できる。
「エオノラ。呪いを解いてくれてありがとう。私を好きでいてくれたことも嬉しい。あなたを心の底から愛おしく思う。私が誰であろうとそれは変わらない」
フェリクスの真摯な言葉にエオノラは胸が高鳴っていくのを感じる。きゅうと胸の奥から愛おしさが込み上げてくる。
そんなの自分だって同じだとエオノラは思う。どこの誰であろうと、彼は確かにエオノラの知っている彼なのだ。
エオノラは相好を崩して笑った。
「あなたがどこの誰であろうと、私はあなたが好きです」
二人はゆっくりと目を閉じると、どちらからともなく口づけを交わしたのだった。