呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
第6章 あなたの隣で
第39話
王宮に戻ったフェリクスは国王夫妻と久しぶりに面会した。
母である王妃は自分の立場など忘れ感極まって大泣きした。隣の父である国王も目に涙を浮かべて温かく迎え入れてくれる。
「よく、無事に戻ってくれた。そして今まで辛い思いをさせてすまなかった。父親として、国王として、私はおまえを誇りに思う」
フェリクスもまた目頭が熱くなるのを感じていた。
初めて呪いが発現した日、もう二度と二人には会えないだろうと覚悟していた。
まさかこんな日がくるなんて夢にも思わなかった。これもすべてエオノラのお陰だ。
国王は王妃が落ち着くの見届けると、王室長官を呼んだ。
「今日はいろいろと疲れただろう。もう下がりなさい。改めて明日、話を聞かせてくれ」
「はい、父上」
クリスは二人に一礼すると用意された客間の一室で休むことになった。
案内された部屋の扉を開けると、ソファにはハリーと、その隣に意外な人物が居合わせていた。
「ルイ兄上、お久しぶりです。新婚旅行から帰ってこられたのですね」
「フェル! 先程王宮に戻ったばかりだよ。呪いが解けたと聞いて、いてもたってもいられなくて来てしまったよ」
第一王子のルイストルが今にも抱きついてきそうな勢いで駆け寄ってきたので、フェリクスはやんわりと手で突き返した。彼はスキンシップが多いので苦手だ。
どうして連れてきたんだ、と目でハリーを咎めると彼は楽しそうににやにやと笑っていた。
「ちょっと面白い話を兄上から聞いたから、その話は是非フェリクスにも聞かせようと思って連れてきたんだよ」
ハリーは得意げに顎を撫でると、ルイストルが話し始めた。
「新婚で各国を巡りながら、君の呪いを解く手がかりになりそうなものを調べていたんだ。それで、面白い話を耳にしたんだよ」