呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 周囲の目から見ても、フェリクスはその可憐な少女に魅せられているように見えた――が、次の瞬間にはフェリクスがアリアの手を払い除けた。
「先程からいろんな令嬢があなたのようにダンスを誘ってくださいます。お言葉は嬉しいですが、私にはもう心に決めた人がいます。それからそんな媚態を呈するような視線で見つめられても、私の心は動きません。……正直、うっとうしいだけです」
「なっ!」
「それから私が社交界に無知とお考えのようですが、ある程度は知っているつもりですよ。ホルスト男爵令嬢、婚約者がいるのに他の男に言い寄るなんてはしたないにも程がある。あなたのような女性のことを世間では尻軽と呼ぶのでしょうね。社交界を離れていたのでこのような女性に遭遇するのは初めてですが、あなたの醜悪さは目に余ります。……まあ、キッフェン伯爵令息と同レベルであることを考えれば随分とお似合いのようです。改めて婚約おめでとうございます」

 爽やかな笑みを浮かべるフェリクスに対して、アリアは顔を真っ赤させて身体を震わせている。フェリクスはアリアとの会話はもう済んだと言わんばかりに身を翻すとエオノラのもとへ真っ直ぐに向かってきた。

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