呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~

「エオノラ、一人にさせてすまない。先に言っておくけど、あなた以上に心惹かれる令嬢なんてここにはいないから安心して」
「フェリクス様……」

 たった一言、安心する言葉を掛けられただけなのに、ざわついていた心が静かになる。もちろん事情を知っていたからそういった言葉を掛けてくれたのだろうが、エオノラにとってそれは充分過ぎるほど安心材料となった。
 フェリクスは愛おしそうにエオノラの手を取ると周囲を見渡してから声を張り上げる。


「今宵は私の王族復帰を祝い集まってくれて心より感謝申し上げる。皆も知っての通り、私は長年の間呪いで苦しめられていた。そのせいで両親に会うこともできず、孤独な生活を強いられていた」
 これまでの生活がどれほど辛かったかフェリクスの悲痛な胸の内が聞こえてくる。
 エオノラが眉尻を下げて話を聞いていると、突然彼と視線がぶつかった。
「しかしそんな中、私に希望を与えてくれる人が現れた。呪われて醜い姿となった私に臆することなく真摯に向き合ってくれた人。その人は私の最愛の人であり、心の支えであり、そしてかけがえのない存在だ」
 フェリクスは言い終わると、エオノラの前で跪く。

< 195 / 200 >

この作品をシェア

pagetop