呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「エオノラ、あなたには何度も心を救われた。だから、これを受け取って欲しい」
 フェリクスはエオノラの手を取ると甲に口づけを落とし、クリスの時からずっとはめていた琥珀の腕輪をエオノラの細い腕にはめる。
 エスラワンの王族が公の前で女性に跪き、装身具を贈ることは婚約の申し込みを表す。

 周りの貴族たちからは歓声の声が上がり、あまりにも熱烈でロマンチックな言葉にときめいた女性陣からは黄色い声が上がった。
 エオノラは顔を真っ赤にさせながら、フェリクスの緑の瞳を見つめていた。
「……私がフェリクス様の隣にいても良いんですか?」
「あなた以上に私を支えてくれる人は、世界中のどこを探しても見つからない。だからエオノラ、私を受け入れて」
 腕輪の琥珀からは彼が誠実であることを音として伝えてくる。

 その音に応えるように、フェリクスはどこまでも暖かい眼差しをエオノラに向けてくれる。エオノラは瞳を細めるとゆっくりと口を開いた。

「――もう、とっくに受け入れています」

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