【電子書籍・コミックス配信中】呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
「フェリクス様」
頬に掛かっていた髪を耳に掛けられ、そのまま優しく撫でられる。フェリクスの細くて長い指はエオノラの頬をくすぐるように滑ると顎を持ち上げる。やがて、フェリクスが口づけを落とした。
彼の熱を孕んだ唇が重なる度、その刺激的な甘さに頭がくらくらする。
解放されたエオノラは肩で息をしながら真っ赤になった頬を両手で挟むと顔を逸らした。
ちらりと目を向ければ、彼はペロリと唇を舐めている。その仕草があまりにも妖艶で、刺激の強い光景にエオノラは声にならない悲鳴を上げる羽目になってしまった。
暫く経って顔の熱が収まると、フェリクスが庭園を眺めながら呟いた。
「今まで一度も庭園の中を二人で歩いたことがなかった。エオノラ、私と一緒に散歩して回らないか?」
青みがかった銀色の髪を靡かせながらフェリクスが手を差し出してくれる。
「……フェリクス様と一緒ならどこへでだって行きますよ」
エオノラは、彼の手の上に琥珀の腕輪をはめた方の手を重ねて椅子から立ち上がる。
そして、陽だまりに包まれた美しいバラの庭園の中を二人並んで歩いて行った。