【電子書籍・コミックス配信中】呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
野菜なしの料理では味気ないし、栄養だって偏る。仕方がないのでエオノラはそれを使って料理を始めた。
温めたフライパンにバターをひき、皮目から鶏肉を焼いていたところで、クリスが姿を現す。
「何を作っているんだ? 香ばしい匂いがするな」
「クリス様、おはようございます」
エオノラは振り返って挨拶をする。鶏肉が良い感じに焼けたので、用意していた野菜をそこに加えた。その間にクリスはエオノラの隣にやって来て、フライパンの中を覗き込む。
「……おい、これは芽キャベツじゃないか」
どうして嫌いな芽キャベツを入れるんだ、と非難めいた視線を向けられる。
エオノラ困った表情を浮かべて答えた。
「それが野菜箱に芽キャベツしか入っていなかったんです。それからこちらのメモが」
クリスは野菜箱の中を確認し、エオノラからメモを受け取る。内容を読み終えた途端、クリスは紙を片手でクシャリと握り潰した。
「これはハリーの字で間違いない」
苦虫を噛み潰したような顔をするクリス。
紙には『旬の野菜をたくさん食え』と書いてあった。
「め、芽キャベツは茹でるよりも炒めたらまだ美味しくなるって話を料理人から聞きました。今炒めているので、もしかしたら食べられるかもしれません!」
必死にフォローを入れるエオノラだが、クリスは不機嫌なままだ。