呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
「あっ、ありがとう」
素直にお礼を言ってハンカチを受け取ると。と、イヴが優しく肩を抱いてくれた。
「……屋敷の中に戻りましょう。温かい飲み物をご用意します」
ここ数日、イヴはずっと側にいてくれる。優先すべき仕事もあるだろうに、彼女は一言も文句を言わずにエオノラのために甲斐甲斐しく働いてくれる。
このままではずっとイヴに甘えて、迷惑を掛けることになってしまう。いい加減、立ち直らなくては。
エオノラはハンカチで涙を拭うと微笑んでみせた。
「いつまでも落ち込んでちゃ駄目よね。アリアにとっては喜ばしいことだもの……」
もう気にしていない、という意思を示したかったのに随分湿っぽい声になってしまった。
イヴは口を開き掛けて噤むと、やがて躊躇いがちに言葉を紡いだ。